「世界最古の鉄器、トルコで発見 ヒッタイト起源説覆す」

2009年3月26日3時1分(asahi.com

 中近東文化センター(東京都三鷹市)が調査を続けているトルコのカマン・カレホユック遺跡で、紀元前2100〜同1950年の地層から、小刀の一部と見られる鉄器1点が発見された。鉄滓(てっさい)(鉄を生産・加工する時に出るかす)と、鉄分を含んだ石も確認され、鉄づくりが行われていたことが確実になった。人工の鉄の利用は紀元前15世紀ごろに同じアナトリア半島ヒッタイト帝国で始まったとされてきた世界史の通説が書きかえられる。

 鉄器は2000年の調査で出土したもの。折れていて、つなぐと長さ5センチほど。さびがひどいが、切断して断面をX線で調べると、鋭い元の形が見えた。片側だけに刃がある小刀の一部と見られる。鉄滓は1個で直径2センチほど。原料と考えられる鉄を含んだ石は2個確認された。

 同文化センターは中近東の歴史・文化を研究する財団法人として79年に設立、85年から現地で調査を続けている。昨年までの調査で紀元前15世紀よりも古い地層から鋼を発見していた。しかし、上の地層から落ち込んだ可能性も否定できなかった。そこで出土した金属類の調査・分析を、岩手県立博物館の赤沼英男上席専門学芸員文化財科学)が昨年から進めていた。

 赤沼さんは「原料も含め加工段階の違う鉄が同じ地層から発見されたことで、この遺跡で鉄の加工が行われたことに疑いの余地がなくなった」という。

 これまでは、人工的に鉄を作り出したのはヒッタイト人とされてきた。中国で鉄器が登場するのは前7世紀ごろ、普及したのは戦国時代の前4世紀ごろで、弥生時代だった日本にもそのころ伝わったらしい。

 同文化センターの大村幸弘・アナトリア考古学研究所長は「鉄の生産はアナトリア半島で独自に始まり、後に北方から進入し征服したヒッタイト人が武器として利用し、その技術を秘密として守ることでオリエントに覇を唱える帝国を築き上げたのだろう」と語った。(渡辺延志)