成瀬巳喜男『女が階段を上る時』(1960)

seiwa2005-10-27

今週で企画特集が終わってしまうので、無理して観に行った。

女が階段を上る時(111分・35mm・白黒)
夫に先立たれて銀座のバーで雇われマダムとして働く女(高峰)。新しい店を持ったものの、エゴの強い男たちに囲まれ、流されてゆく姿が一人称のナレーションで綴られる。撮影の玉井は銀座のバーの構造を丁寧に調査して撮影に臨み、衣装は高峰秀子自らが担当。
’60(東宝)(脚)菊島隆三(撮)玉井正夫(美)中古智(音)黛敏郎(出)郄峰秀子、森雅之、団令子、仲代達矢加東大介中村鴈治郎小沢栄太郎、淡路惠子、山茶花究多々良純藤木悠、織田政雄、三津田健、細川ちか子、沢村貞子

銀座のバーの雇われマダム(高峰秀子)の話。高峰秀子はそこまで美人だとは思っていなかったが、この作品では、銀座で生きる女役ということもあって、けっこう色っぽく映っていた。しかし映画の最後の方になると、やはり幸うすい感じ、ただの美人ではない感じがどんどん強まってきて、そこらへんはもう高峰の独壇場なのだった。
黛敏郎による音楽がスタイリッシュ。ひとコマひとコマのセンスも、言うことなし。今日は「成瀬視線」の秘密を解き明かそうと「唯物論的」に見ようとしたのだが、物語の面白さに引き込まれて、それどころではなかった。加東大介と高峰が幸せに結ばれそうになったとき、まさかこれで終わるわけはないと思ったけれど、「でもこれで終わって欲しいなあ」とも思い、結局終わらなかったわけなのだが、いずれにしても完全に成瀬の手のうちで踊らされていたわけである。いや、「踊らされた」んじゃなくて、こちらから「踊らされにいった」わけだけれど。
写真は『浮雲』の再現セット。