『レキシントンの幽霊』

昨晩寝つかれないので、「沈黙」と「氷男」と「トニー滝谷」を、ふとんのうえで読んだ。それにしても村上春樹の妄想はやっぱりやばいなと感じる。こんなにやばい人が国民的作家であるというのは、よく分からないといえば、よく分からないことだ。村上春樹のポピュラリティーは、いったいどこらへんから発生しているのだろうか。文章が読みやすいのはたしかだけど、乾いた文章のなかに隠されている粘着質は、けっこう読者を選ぶと思うんだけどなぁ。
「氷男」は設定が実験的でいまいちピンとこなかったが、「沈黙」の主人公の冷笑的な視線と、「トニ−滝谷」の離人症的視線は、長編の場合のように作品構造上の安定感がめざされていないぶん、よりいっそう端的な暴力性を表現するのに効果を挙げていると感じられた。
スプートニクの恋人』とか『海辺のカフカ』とか『アフターダーク』とか、評論めいたこともずいぶん友人に話したことがあったが、ブログを書く以前のことだったし、もうほとんど忘れちゃったなぁ。

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

レキシントンの幽霊 (文春文庫)