『戦争と平和』

(425分・35mm・カラー) Война и мир
文豪トルストイを原作に仰ぎ、ナポレオン軍が君臨した19世紀初頭のヨーロッパを舞台に繰り広げられる雄大な歴史絵巻。ソ連の国家事業ともいえる巨大規模で製作され、伯爵の娘ナターシャをめぐる男たちの愛憎を軸に、絢爛たる舞踏会のシーン、史上最大規模のエキストラを動員した戦闘シーンなど圧倒的なスケールを誇る。全4部を一挙上映。
’65-67(監)(脚)(出)セルゲイ・ボンダルチュク(原)レフ・トルストイ(脚)ワシーリー・ソロヴィヨフ(撮)アナトーリー・ペトリツキー(美)ミハイル・ボグダーノフ、ゲンナージー・ミャスニコフ、アレクサンドル・ボリゾフ、ニコライ・トルカチョフ(音)ヴァチェスラフ・オフチンニコフ(出)リュドミーラ・サヴェリエワ、ヴャチェスラフ・チホノフ、ヴィクトル・スタニツィン、キーラ・イワノワ=ゴロフコ、オレグ・タバコフ

超大作。425分ということは、7時間5分。一日中。
11時開始だったので、10時にはフィルムセンターに到着するようにした。10時20分すぎには満員。こちらは必死なのに、老人たちときたら朝の強いこと!
映画は4部構成。第一部は1805年から1809年、アウステルリッツの戦いあたりまで。第二部はナターシャとアンドレイを中心とする恋愛模様(そこに主人公のピエールが絡んでくる)。第三部はボロジノの戦い。第四部が、ナポレオン軍のモスクワ略奪から敗走まで。
すべての面で破格の映画。時間もそうだし、資金のかけかたが半端ではない(当時のポスターに「制作費110億円」と記載されている)。スペクタクル映画でありながら、主観的な映像表現に成功しているのも、ちょっと格が違う感じがする。
カメラワークが絶妙で、主観的視点と客観的視点の切り替えがひとつの移動ショットのなかで連続的になされているのが、きわめて効果を挙げている。戦争場面のロケは、これ以上ないくらい、ほとんど信じがたい規模のロケなのだが(空撮でも画面に収まらないほど、至る所で爆発!)、戦術レベルで駒でしかない兵隊の超ロングショットをそのまま兵隊の主観的視点に切り替えることで、多層的な戦争のリアリティーが見事に浮かび上がっている。もはや筆舌には尽くせない。第三部だけで良いから、ちょっと観てみてください(これに比べると、スピルバーグプライベート・ライアン』の上陸作戦なんて、オモチャみたいなもんである。コッポラ『地獄の黙示録』のナパーム弾はいい線いってるけど、あれはスカッとするだけのスペクタクルにすぎない。)
あと、第二部の恋愛編の魅力も凄い。ナスターシャが滅茶苦茶美人で、美人を鼻にかけている感じが、憎たらしいほど出ている。何であんなに演技がうまいんだろう、美人なんだろう。オーケストラもめちゃくちゃ上手いし、とくに舞踏会の場面の移動ショットは呆気に取られるくらい凄かった。
「奇跡的超大作」。

戦争と平和 [DVD]

戦争と平和 [DVD]