『世にも面白い男の一生 桂春団治』

大阪弁森繁久彌の演技が絶品。大傑作。

(108分・35mm・白黒)上方落語界に新風を吹き込んだ酒癖も女癖も悪い落語家・桂春団治が描かれた作品。舞台となる戦前の大阪ミナミの法善寺横丁を、水谷は綿密な実地調査や計測の末にオープンセットとして見事甦らせた。
’56(宝塚映画)(監)(脚)木村恵吾(原)長谷川幸延(撮)三村明(音)船越隆二(出)森繁久彌、田村楽太、淡島千景高峰三枝子八千草薫浮世亭歌楽

最後、幽霊になってしまう場面で、いつ看護婦のお尻を撫でるのか、わくわくしてしまった。「サービスやがな。」
「…森繁の存在自体に、なにか、日本人の心をひっつかむようなところがあるのではないか。」「……そして、森繁の存在は、むしろ、あとからくる日本の喜劇人たちの、生理のみならず、生き方をも、ときとして、狂わせてしまったのである」(小林信彦『日本の喜劇人(新潮文庫)』)。
このようにいささか謎めいた森繁の圧巻の演技を、この映画は十分に堪能させてくれる。法善寺横町辺りの情景も素晴らしく、淡島千景の情の濃やかさ、車引きのおじさん(浮世亭歌楽という人だろうか?)のとぼけた存在感も、忘れがたい印象を残す。必見。