ケレスティヌス5世
ダンテ『神曲』地獄篇第三歌。
見知りの顔を幾つかその列の中に認めたのち、心おくれのため大事を拒んだ人の亡霊を、私はそれと知った。
よって直ちに私は、これぞ神にも神の敵にも憎まれた陸(ろく)でなしのやからの、より集りに違いなしと悟った。
生きたことの無いこれら人間の屑は、その裸身を、むれつどう虻や蜂に、いたく刺されていた。
ために顔には血がしたたり、血は涙とまじるのを、ぞろぞろと足もとをはういやらしい虫のむれが、とり集めてゆく。(42)
地獄の玄関にケレスティヌス5世は休むことなく「くるめきまわり、駆け走り」しているのだが、どう考えてもこれは可哀想である。「心おくれのため大事を拒んだ」ということなら、私だって地獄にも天国にも入れず、かけまわることになりそうなものだ。
ケレスティヌス5世に「神の声」でびびらせ皇位を委譲させたボニファティウス8世は、「巌の穴に逆立ちの姿勢で突っ込まれ、足の上にはめらめらと焔の燃えている」状態のニコラウス3世から、首を長くして待ちわびられている。
かれは叫んだ。「もうそこに立っているのか、もうそこに立っているのか、ボニフィファツィオ?予定書はわしに数年の鯖を読みおった。
おぬしはあの役得に、こうも早く飽きたか、それをつかむためには、あのうるわしい淑女をだまして奪い、手ごめにするのさえ恐れなかったあの役得に?」(216)
ボニファティウスは確かに悪い人で、フィレンツェのコムーネの権力をめぐる闘争をあおるだけあおって、白派のダンテはそのとばっちりを食ったわけである。美王フィリップ4世がいわば敵討ちをとる格好になったが、『神曲』では彼はどう書かれていたっけ?
夜寝る前に『神曲』を喜んで読んでいたことが2年ほど前だったかに、あった。
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