伊藤大輔『下郎の首』(1955)

チャンバラ映画の秀作。『元禄美少年記』伊藤大輔監督。

(98分・35mm・白黒)父の仇討ちに旅へ出た若者(片山)と彼に同行する槍持ち(田崎)の、忠義と裏切りの顛末を重厚に描いた伊藤大輔作品で、平野の重量感ある画面が味わえる。伊藤にとっては自らの日活時代の『下郎』(1927年)のリメイクだが、本作では現代からの回想として描いた。
’55(新東宝)(撮)平野好美(監)(脚)伊藤大輔(美)松山崇(音)深井史郎(出)田崎潤片山明彦、瑳峨三智子、小澤榮、岡讓司、三井弘次、高田稔、舟橋元、横山運平、鳥羽陽之助、浦邊粂子

次郎長の鬼吉こと、田崎潤が、滑稽な可笑しみのある演技を見せている。瑳峨三智子さんだろうか、山田五十鈴にそっくりで*1、すごく色っぽかった(とくに旅籠で田崎潤に飛びつくシーン)。
仇討ちの旅に出て雨に降られるシーンの濡れそぼつ具合、逃げた雲雀を呼び寄せてまた空に放つ際の叙情的なシーンが素晴らしい。また両脚の不具者が突然立ち上がったり、田崎潤がすぐにしびれて立てなくなるシーンが面白い。フラフラなのに殺陣に突入してしまい、槍や刀を振りまわしているのをみると、もどかしくてハラハラ感が倍増する。マキノ映画と比較しても、殺陣のシーンに男性的なダイナミズムを感じた。
明日は新文芸座に『青い山脈』を観に行くのがミッション。マキノの『死んで貰います』が日程的に観られないことが判明して、ひどくショックを受けた。

*1:調べてみたら本当に山田五十鈴の娘なんですね。びっくり。