綿矢りさ『インストール』

今朝、読了。コムソモリスクナアムーレ。タミフル

…女の人は顔よりずっと年老いた手を頬にあててしばらく私の制服に視線を漂わせていたが、恥ずかしくなったのか、またふっとうつむいてしまった。沈、黙。母が意図的に作り上げた威圧的な沈黙である。…
うーん、静かだ。息づまる。廊下から見渡せる平和な天上界と下界は今、私たちを見放してぐんと遠くになってしまった。ただ雲だけがうすい青空の中を流れ、その淡い影が女の人の白いカーディガンや白い顔の上をすべっていく。その空間の広さに私はもう押し潰されてしまいそうだ。私を含むクラスメート達は教室で毎日これだけの空間を他愛ないおしゃべりで埋めることに成功しているのだから、すごい。しかもそれに気づいていない振りして安心を成り立たせているのだから、健気である。…(38−39)

ひねくれた面白い見方もできるし、斬新な表現も駆使できるし、この人は才人である。おまけに処女がエロ・チャットするという、オヤジ好みのサービス精神まで発揮されている。見てのとおり、マンションという日常空間を描写する腕前もきわめて高水準。
頭が良いんですね、きっと。噂の新刊を読む準備ができました。あと将来的にチャットとかじゃないリアル・エロ場面を読んでみたい*1

インストール (河出文庫)

インストール (河出文庫)

*1:対象世界が興味本位で選ばれているように思うので。もっと切実でリアルな世界を描いて欲しいと、この作品だけを読んで思った。