今村昌平『「エロ事師たち」より 人類学入門』(1966)

(128分・35mm・白黒)ポルノ写真やフィルムの製作販売や売春婦の斡旋をする主人公(小沢)は、下宿先の子連れ女主人(坂本)と恋仲になるが、その娘とも関係を持つにいたり、息子からは金を搾り取られる。本作は記念すべき今村プロ第1作。日活との共同製作で、当初は脚本だけ執筆する予定であったが、最終的には今村自身が撮ることとなった。
’66(今村プロ=日活)(原)野坂昭如(脚)今村昌平、沼田幸二(撮)姫田真左久(美)高田一郎(音)黛敏郎(出)小沢昭一坂本スミ子、中村雁治郎、ミヤコ蝶々田中春男、佐川啓子、近藤正臣西村晃、菅井一郎、中野伸逸、北村和夫殿山泰司、浜村純、菅井きん、木下サヨ子、園佳也子、福山博寿、小倉徳七、西岡慶子、玉村駿太郎

やりすぎ。セックスもそうだが、観念的に過ぎる。大阪弁が良いし、明らかに東大阪あたりとわかる街の雰囲気も良いのだが、性に対する思い入れがあまりに強すぎて、前のめりにつんのめってしまっているように感じた。
とはいえ、濃密というか暑苦しいというか、画面の質感や、大胆な構図で切り取られたショットはやはり見事だ。小沢昭一は「真面目に」エロいし、坂本スミ子の気の狂い方も素敵。中村雁治郎のエロ爺ぶり、ミヤコ蝶々の女郎屋女将ぶりも良い(『吹けば飛ぶよな…」を彷彿とさせる)。次郎長で法印大五郎の田中春男もはまっていたし、殿山泰司が精神薄弱の実の娘と交わるシーンも今村監督ならではの魅力に満ちていたと評価してよい。ダッチワイフで終わるのもなかなか。
ところで「次郎長」といえば、昨日の『にっぽん昆虫記』でも大政の河津清三郎が母娘と交わる老人役をやっていて、娘の吉村実子とセックスをしながら入れ歯が外れるという忘れがたいシーンを残している。でも大政はやっぱりかっこよかった。