黒木和雄『原子力戦争』(1978)

(106分・35mm・カラー)岩波映画時代の仲間だった田原総一郎ルポルタージュに刺激された黒木が、原子力発電所の事故隠蔽の体質を告発した作品。原田芳雄を主人公にしたやくざ映画の体裁をとっているが、演出にあたって黒木の念頭にあったのはカフカの「城」だったという。ただ、その発想を優先したため、かえって原発への理解が不十分になったと監督は後に述べている。
’78(文化企画プロモーション=日本アートシアターギルド)(原)田原総一郎(脚)鴨井達比古(撮)根岸栄(美)丸山裕司(音)松村禎三(出)原田芳雄山口小夜子風吹ジュン石山雄大、浜村純、佐藤慶、和田周、草薙幸二郎、西山嘉孝、戸浦六宏、鮎川賢、早野寿郎、能登智子、糸賀靖雄、岡田英次

フィルムセンター。佐藤忠男評は、「…社会派的な問題提起、問題追及としても、またミステリーとしてのエンタテイメント性でも中途半端な出来」というもの(152)。ひどい。佐藤慶原田芳雄が出ているだけで、私は十分に堪能した。
でもまあ確かに、ラストの締めくくり方はストーリー的にもっと工夫があって良かったかも。謎の被害者夫人の謀略もいまいち良く分からなかったし。原田芳雄がもっと活躍できるようなプロットがありえたはずだ。原田芳雄風吹ジュン*1の純情な気の通い方は素晴らしかったのだけれど。

*1:風吹ジュンは若い頃はサルみたいな顔をしていると思った。