ポアンカレ予想

▽百年の難問はなぜ解けたか▽数学者失そうのなぞ▽ポアンカレ予想の魔力に取りつかれた天才の悲劇 NHKスペシャル◇100年にわたって誰も解けなかったという世紀の難問「ポアンカレ予想」の証明に挑んだ天才数学者たちの頭脳をCGと実写の合成で映像化しながら、彼らの人間模様をたどる。昨年、ポアンカレ予想はロシアの数学者グリゴリ・ペレリマン氏によって証明された。それにより、宇宙がどんな形をしているのかを解き明かす手掛かりが見つかった。ペレリマン氏は数学界最高の栄誉とされる「フィールズ賞」の受賞が決まったが、彼はそれを拒否し失跡。その行動は、真意をめぐるさまざまな憶測を生んでいる。多くの天才たちが挑み、挫折したポアンカレ予想の証明を成し遂げながら、ペレリマン氏はなぜ栄誉に背を向け、表舞台から姿を消したのか。

NHKスペシャル位相幾何学で提出された「ポアンカレ予想」を見事証明したペレリマン博士。宇宙は8つの形に分割できるとする「幾何化予想」を物理学ならびに微分幾何学を駆使して証明し、「ポアンカレ予想」(「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である」)を解明。並みいる数学者もその証明内容を全く理解できなかったという。だがペレルマン博士はフィールズ賞を拒否し、世捨て人になってしまった。それはいったいなぜなのか?
たいへん興味深い内容だったが、ポアンカレ予想も幾何化予想もペレルマン博士が孤独に陥った理由も何一つ理解できなかった。位相幾何学ってのは何となくイメージできたけど、宇宙が8つの形からなるってどういうことよ?「宇宙」に「ひも」が「引っかかる」って??ペレルマンさんの内面に何が生じたのかも結局分からなかった。一言でいうと「天才」って大変なんだなってことか?
ひとつ面白いと思ったのは、数学では「証明」の前に「証明すべき問い」が提出されること。これもよく考えるとよく分からない。証明されるまでは真か偽か分からないのに、どうして「解かれるべき問い」が設定されうるのか?
それにしても天才数学者の内面というのは想像を絶するものがあるようで、それがどんなものなのか、誰かにマンガや小説で表現してもらいたいと感じた。哲学的にいえば、人間は物自体からは遠ざけられた表象を生きる動物だから、「数学的な問い」といっても、究極的にひとつの言語ゲームに内属する以外にないのである。言わば、表象システムの内部で縺れてほどけなくなった言語ゲームを、ゲームの規則を駆使して、規則内在的に解きほぐす、というのが数学者の作業だと考えることができる。そうしているうちに、人間が狂気を帯び始めるというのは、ありそうなことだが、具体的には理解も想像もできない不可思議な事態である。