普遍論争

中世哲学の普遍論争は「実在論vs唯名論」、さらにその中間的立場である「概念論」(アベラール)を置く形で展開されてきたとされるが、それは近代哲学の捏造だった!という話。では現実には何が争点だったかというと、それはアベラールの「事態」という概念を解読することで理解できる。といっても簡単に理解できるはずもないのだが、アベラールはむしろ唯名論の側に近い立場であり、「事態」とは「普遍」ではない、言語的、志向的なものである、そういう形での述語である(「××は△△である限りにおいて○○である」という時の○○が「事態」なのだと思われる)と考えるなら、中世哲学の真の問題設定は「<見えるもの>対<見えざるもの>」に置かれるべきだ、というのが著者の主張。
「中世哲学なんでスコラ哲学でしょ」という見方が、いかに偏見に満ちたレッテル貼りであるかを暴いていく筆致が読ませる。基本的に訳が分からないが、とにかく文体が素敵。巻末の人物紹介もすごく面白い。