ジャン・ルノワール『草の上の昼食』(1959)

LE DÉJEUNER SUR L’HERBE (92分・35mm・カラー)教授の婚約を祝う昼食会で、突然巻き起こったつむじ風によって、大騒ぎが始まる。マネの名画《草上の昼食》をヒントに、父ピエール=オーギュストのアトリエがあった南仏レ・コレットで撮影された作品。父が愛した自然を自らもフィルムで描くことができたことに、ルノワールは思いがけない喜びを味わったという。
'59仏(脚)ジャン・ルノワール(撮)ジョルジュ・ルクレール(美)マルセル=ルイ・デューロ(音)ジョゼフ・コスマ(出)ポール・ムーリッス、カトリーヌ・ルーヴェル、フェルナン・サルドゥー、ジャクリーヌ・モラーヌ、ジャン=ピエール・グランヴァル、ロベール・シャンドー、ミシュリーヌ・ギャリー、フレデリック・オブラディ、ギレーヌ・デュモン

風景描写が「絶大な魅力」(黒木和雄の記録映画によく似た色彩美)の、爽やかさに溢れた、喜びいっぱいの喜劇。つむじ風がトンデモなさが楽しく、インテリの戯画化された動きも面白い。まったく見たことのない独自の魅力を感じた。教授の「くたばれ科学」のセリフに笑う。

人工授精の主唱者ポール・ムーリスが大統領候補にかつぎ出され国際的な有名女優と婚約させられるが、田舎へ出かけたとき田舎娘カトリーヌ・ルーヴェルと恋におちて結ばれる、という他愛ないジャン・ルノワール監督の風刺喜劇だが、父親オーギュスト・ルノワールの昔の家にロケしたそうで、色彩画面もルノワールの名画を再現したみたいなのが絶大な魅力。だから採点もよろしい。ルノワール展を映画館でみよう。(双葉十三郎『愛をめぐる洋画 ぼくの500本』(文春新書)90〜91ページ)

そういや双葉十三郎『ぼくの特急二十世紀』(文春新書)は興味深い本だった。文春新書は本が妙に軽くなって、なかなか良いと思う。