NHK「病の起源2」

  • ネアンデルタール人は体毛があったので、暑いジャングルを移動するのが苦手だった。
  • そこで進化上、体毛を薄くし、発汗による体温調節をするようになった。だが今度は紫外線を防げなくなった。
  • ホモサピエンスは皮膚の下にメラニンを貯え、紫外線をブロックし始めた。体温調節機能が増し、移動が可能になった。
  • アフリカからホモサピエンスの大移動。ヨーロッパ方面とアジア方面とにアラビア半島で移動が分岐。東進派は移動がスムーズだったが、北上派は時間がかかった。なぜか?
  • 太陽光の微弱な地域ではメラニンが邪魔をしてビタミンDが体内で生成されない。カルシウムとビタミンDによって硬い骨が出来るため、ビタミンDの欠乏は「くる病」をもたらす。北上派はメラニン色素を薄くするように対応しなければならなかったので、移動がままならなかった。
  • グローバル化によって「メラニン色素と太陽光の対応関係」が崩れ、皮膚病やくる病が見られるようになってきた。

転んだ拍子に骨を折る、転倒骨折をする高齢者は毎年60〜80万人(推定)。寝たきりになる場合も多く、脳卒中に次ぐ2番目の原因となっている。高齢者にとって恐ろしい転倒骨折が、太陽光と深く関係していることが分かってきた。/太陽光に含まれる紫外線を皮膚に浴びることで作られるビタミンD。このビタミンDが不足すると、カルシウムの小腸での吸収や骨への吸着が妨げられ、骨がもろくなってしまう。ビタミンD不足は、さらに歩行速度やバランス、そして筋力の低下を招き、転倒の危険を増すことも分かってきた。/人類進化をひも解くと、その道のりは太陽との闘いだった。およそ20万年前にアフリカのサバンナで誕生したヒト、ホモ・サピエンスは、強烈な紫外線から身を守るために褐色の肌を獲得した。しかし、およそ6万年前、アフリカを出て生息域を世界へと広げる過程では、今度は褐色の肌がビタミンDを作るのに必要な紫外線をも遮断してしまうという問題が生じた。この事態に、ヒトは北へ向かうにつれ肌の色を薄くし、紫外線とのバランスを取った。こうして生まれた肌の色の多様性が私たちヒトの多様性を生んだ。/しかし現在、高度な文明を手に入れたヒトは、地球規模の移民や、ほとんど太陽に当たらない生活など、自らの適応に逆らうような行動をとっている。その結果、皮膚がんやくる病、そしてビタミンD不足といった、進化の中で解決してきたはずの病に悩まされるようになった。太陽と闘い続けたヒトの進化を振り返り、太陽との付き合い方を考える。