ジュリアン・シュナーベル『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)

LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON フランス・アメリカ合作映画 フランス語 1時間52分 監督: ジュリアン・シュナーベル 出演: マチュー・アマルリックエマニュエル・セニエマリ=ジョゼ・クローズ
突然倒れ身体の自由を失った、ELLE誌の編集長ジャン=ドミニク・ボビー。唯一動く左目の20万回の瞬きで、蝶のように自由な記憶と想像力で自伝を書き上げた、驚異のトゥルー・ストーリー!!

本人から見える世界がそのまま映像化されており、観客は不自由な身体感覚を追体験することになる。それはまさに潜水服で身動きの出来ないような拘束感である。しかし客観的なショットや本人の想像世界に急転することで、閉塞感は急激に自由な感覚へと解き放たれる(蝶の夢)。この浮遊感を伴うイメージは、世界の豊饒さを示すものであると同時に、主人公の人生に対する肯定が、この世界の豊饒さゆえのことであった事実を示唆する。
他にも、美人の言語療法士がカメラを覗きこみ、親しげに話しかけてくるシーンがエロティックで素晴らしい。ラストで「セ・マ・ヴォワチュール!」と叫んで、パリをドライブする回想シーンに入るのだが、このシーンで流れる「大人は判ってくれない」のテーマも良かった。フランスの美人は眉毛と髪の毛の色が合っていないことがあるのだが、これも何だかカッコイイ。