衣笠貞之助『雪之丞変化[総集篇]』(1935)

(97分・35mm・白黒)朝日新聞に連載された三上於菟吉の小説を映画化。林長二郎が復讐心に燃える歌舞伎の女形・雪之丞とその母親、やくざ者の闇太郎の三役を演じて魅力を存分に発揮した。松竹創立以来の収入で、蒲田から大船への撮影所移転費用を一度に稼ぎ出したとも言われる。
'35(松竹下加茂)(監)(脚)衣笠貞之助(出)林長二郎(雪之丞、闇太郎、母親)(原)三上於菟吉(脚)伊藤大輔(撮)杉山公平(音)松平信博、杵屋正一郎(出)嵐徳三郎、障沒ー國典、千早晶子、伏見直江、山路義人、志賀靖郎、障沛シ錦之助、南光明、日下部龍馬、原健作

時代劇なのに都会的洗練を感じさせるのは、市川崑バージョンと同じ。むしろ市川監督が衣笠バージョンを忠実にリメイクしていたのだと分かる。雪之丞の父母が亡霊となって現れるシーン、場面転換の斬新さなど、衣笠の才気を感じさせる出来映えとなっている。市川版ではJAZZが使われていたが、衣笠版ではクラシック風のBGMが流れる。
市川版では若尾文子の演じた浪路役だが本作ではあまり活躍しない(総集篇だからかもしれないが)。山本富士子はやっぱり色っぽかったなぁと今更感心する。長谷川一夫が若くて痩せており、恐るべき美貌にもはや呆れ果てた。