ジャスティン・チャドウィック『ブーリン家の姉妹』(2008)

"The Other Boleyn Girl" 製作 アリソン・オーウェン、原作 フィリッパ・グレゴリー、脚本 ピーター・モーガン、撮影 キアラン・マクギガン、出演 ナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソンエリック・バナ

ナタリー・ポートマンって、菊川怜に似てるよな、と思った。頭は切れるし顔も整っているが、主役を張るには何かが欠落している。才気走るあまり、本格派を演じる深みが感じられない。
その意味で、スカーレット・ヨハンソンアン・ブーリンを演じさせる手もあったのではないか。ナタリー・ポートマンが「キャサリンとは離婚して、イギリス国教会を作れば良いのよ」と叫ぶと、いかにもプラグマティックな、現代アメリカ人の発言のように聞こえてしまう。アン・ブーリンの才気煥発さも「女の浅知恵」にしか映らない憾みが残る。
もっともこの作品自体に人物描写・歴史描写の深みが欠けているのだから、それも仕方がないかもしれない。イギリス国教会をめぐる話を膨らませるのでも良かったし、トマス・モアやウルジー卿を登場させたり、ヘンリー8世の兄貴コンプレックスを丁寧に描いたりすれば、もっと味わいが増したのではないか?イギリス英語の魅力、絵の美しさ、歴史物としての楽しさはあるが、昼ドラ的演出の感は否めなかった。
ナタリー・ポートマンがバックから襲われるシーンは、「ヘンリー八世、大丈夫か?」と思って、ちょっとドキドキした。キャサリン王妃も一人だけ素晴らしい演技だったし、1200円分(レイトショー)くらいは十分に楽しめたと思う(Hiroumixは居眠りしていたが)。