ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

ブラームス:バイオリン協奏曲 二長調
ジュリアン・ラクリン(バイオリン)
アンコール「バッハ:無伴奏バイオリン パルティータ第2番 BWVからサラバンド
−−休憩−−
ブラームス交響曲 第3番 ヘ長調
R.シュトラウス交響詩ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
アンコール「ブラームスハンガリー舞曲第一番」「ヨハン・シュトラウスポルカハンガリー万歳!」」

あこがれのロイヤル・コンセルトヘボウ。マリス・ヤンソンス指揮。
ブラームスなりの前向きさが感じられる、バイオリン協奏曲。バイオリン・ソロが奏でる弱音は、教養市民の、他人からはそれとは気取られない悩みの吐露である(と、勝手に思い込んでいる)。それは思い出のように、いつのまにか、貴族的優雅さの彼方にかき消される。人生が終わればすべては夢のように美しい。
コンセルトヘボウは弦楽の中(低)音の響きが素晴らしい。バイオリン協奏曲の第2楽章、ちょっとブルックナーっぽい(と思えば思えなくもない)箇所があって、いいなと思った。ブラームス交響曲第3番では、第3楽章の美しいメロディーがホルンとオーボエで繰り返される場所があり、その直前の弦楽の受け渡しがとても美しかった。
サンクトペテルブルクロマン主義的表現とは違って、コンセルトヘボウは薄味だがあくまで上品である。そのぶん、NHKホールじゃちょっと、というところもあった。「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は、その隔靴掻痒を吹き飛ばす、圧巻の音響スペクタクル。金管と弦楽が美しく溶けあい、素晴らしかった。ティル・オイレンシュピーゲルが絞殺される木管の断末魔、思い出のなかで美しくいたずらして遊ぶティル。豊饒できれいな旋律だった。