ケン・ローチ『SWEET SIXTEEN』(2002)

(イギリス/ドイツ/スペイン 106分 ビスタ・SR)脚本 ポール・ラヴァティ 出演 マーティン・コムストン/ウィリアム・ルアン/アンマリー・フルトン/ ミッシェル・アバークロンビー/ミッシェル・クルター/ガリー・マコーマック/トミー・マッキー、2002年カンヌ国際映画祭脚本賞
15歳のリアム(マーティン・コムストン)は、刑務所で服役中の母親のために家を探している。母親は麻薬の密売人である恋人と祖父に巻き込まれ、刑務所に入ったのだ。幼い子供を抱えるリアムの姉は、自立心に欠ける母親と感情的に対立している。リアムは姉と母の和解を願いつつ、家を買うための資金を得ようと、親友のピンボールとヤクの売買に手を染めるのだが…。

スコットランドグラスゴー近くの都市が舞台。スコティッシュ訛りの労働者階級の英語は、ほとんど聴き取れずショックなほどだったが、イギリス人向けにも字幕が付けられたほどだったらしい。
イギリスの労働者階級といえば、ザ・フーとかが思い出されるが、あの時代とは違うのは、第二次産業が絶対的に縮小していることだろう。階級的矜恃の源泉である生活基盤は失われ、麻薬の売人などをして裏社会で登り詰めるぐらいしか、閉塞感を打ち破る道が存在しない。
ふだんは虚勢を張って生きているが、いったん自尊心を傷つけられると破滅的な自傷行為に及ぶ親友・ピンボール。まともな道を切り開くための思考力をまったく失ってしまっている愚かな母親、ピザの配達のようにドラッグの配達を待ち焦がれるジャンキーたち。リアムのIQの高さは舌を巻くほどだが、彼も真の意味で生活を打開する展望はもっておらず、最終的には悲劇的な結末を迎えることになってしまう。母親の壮絶なまでのダメダメぶりが印象深い。