キム・ギドク『サマリア』(2004)

seiwa2005-07-07

主演、クァク・チミン、ソ・ミンジョン、イ・オル。
援助交際をするジョユン。親友のヨジンは見張り役だ。二人の夢はお金を貯め、一緒にヨーロッパに行くこと。ある日、モーテルで援交していたジェヨンは、警察から逃げようとして窓からオチ、死んでしまう。ヨジンは、死んでしまった親友への懺悔として、今度は自分が援助交際を始める。それを知ったヨジンの父は……。終盤の、よろよろと走る若葉マークの車のシーンは涙なしでは見られない!(95分)

同監督の作品としては『春夏秋冬そして春*1も観たことがあるが、とても象徴性の高い映像を作り出す人である。女子高生の援助交際に始まり、奇妙な友情、死、父の復讐劇と事件は続くのだが、じつは、出来事自体にはあまり意味は持たされていない。むしろ、この映画が目を向けるのは、背後で不透明な磁場をなしている「見えない力」の方である。私たちの生は、ときに思いもしない力によって、その意味を撹乱される。偶発性は日常の裂け目から侵入し、異物としてわれわれの感覚を逆撫でする。だが、それは時間とともに馴致されるほかないものだろう。出来事の根源的な未規定性は、受容されてのち「運命」と名指される。この映画が描くのは「運命」へといたる時間の経過である。

*1:2003年。作品紹介。「これは現世か――と見紛うほどに美しい湖上の山寺を舞台に描く、人間の業と食材。幼年期の春、思春期の夏、成人の秋、壮年期の冬、そして再びの春。ある男の一生を四季に重ね、一見、静ひつな美しさだが、そこには人間という動物の匂いにあふれる。「閉」と書かれた紙で目鼻口を塞いで自死する老僧、生きた猫のしっぽでの写経のイメージも凄まじい。ギドク自身が演じる「冬」にはファン大喜び!」