吉祥寺・荻窪で古書探索

seiwa2005-09-21

やっほう。古本屋をめぐってきましたよ。今日の収穫。

  • 吉祥寺「ブ」にて。Montesuquieu『法の精神(上)(中)(下)』岩波文庫、締めて315円。
  • 吉祥寺「よみた屋」にて。Durkheim『Lecons de sociologie』Quadrige、500円。
  • 荻窪「ブ」にて。C.Peirce『連続性の哲学』岩波文庫、400円。杉山茂丸『児玉大将伝』中公文庫、105円。『戦後日本の教育社会』、950円。

杉山茂丸のだけは若干シミがあるが、他の本は状態良好。ただ、『児玉大将伝』は、そう簡単には見つからない本だからね。ちなみに杉山茂丸(1864-1935)は、解説を書いている佐伯彰一によると、次のような人物。

 一体、若き日の杉山は、まぎれもなく矯激なテロリストに他ならない。元治元年生れ、黒田藩主の近侍役を勤めたこともあった由だが、明治一七年に上京した頃は、自由民権運動の熱狂的な闘士で、みずから「首浚ひ組の棟梁」をもって任じていたという。物騒きわまる暗殺者のリーダーという次第で、目ざす相手はいうまでもなく薩長藩閥の巨頭たちであった。そして、後年大隈重信襲撃事件が起こった際、嫌疑をかけられて投獄されたこともある。……その後が、少々おかしい。もとテロリスト杉山は、かつて自分がつけねらい、毛嫌いしていたはずの当の薩長の巨頭たちと、奇妙に通じ合い、仲よくなってしまうのだ。伊藤博文井上毅山県有朋らと深く好を通じて、いつか政界のフィクサー役を演じるようになった、といわれる。……明治、大正、昭和と、いわゆる政界の黒幕として、隠然たる勢力をふるったことは、ほぼ確実であった。
 とすれば、どういうことになるのか。彼は、出身地が共通という事情も働いて、頭山満と親しく、頭山の主宰する玄洋社と深いつながりがあった。葬儀も玄洋社葬で行われた由で、その際、「父の遺骨を安置した車の前に立ちながら、見栄も構はずに涙をダクゝと流して居られた」頭山満の姿を、息子の夢野久作が、感慨をこめて描きとめている。(421−422)

そう、『ドグラ・マグラ』のパパね。文章は、講談調。たとえば「七年の征韓論に冠を掛けて野に下った英雄」の以下のような描写。

南洲先生の辞職は、全国を挙って痛惜し、同情の念に堪えなかった。したがって南洲先生の説が正義で、廟堂の参議が奸物であるかのように考えた。その結果は南洲先生故山に帰るとも、必ず国家のために何事かを考えているに違いない、先生のごとき大人物が、このまま手を拱いて雌伏することはないと、好奇心をもって、多大の望みを先生に托した。まして同郷の陸軍出身の将校は、憤然職を擲って、われもわれもと先生の後を追ったので、西南の風雲はすこぶる急に、猛獣毒蛇の巣窟とも見えた。しかし佐賀の乱にも、神風連の騒動にも、萩の暴挙にも、先生は全く関知せず、閑雲野鶴に伴って、また世間のことに思いを馳せぬかのごとくであった。南洲果して最愛の国家を忘れたのであろうか、熱血火よりも紅なる英雄は、国を憂うること、家を思うに数倍して、君国のために殉せんことを誓ったのである。(144−145)

とにかく、中央線沿いはやっぱり文化レベルが高いわ。古本屋を見てれば、それがよく分かる。おかげで気分の良い一日だった。荻窪駅の南のほうの古本屋に寄れなかったのが、少し心残りだけど。
ちなみに画像は、吉祥寺の(有名なJAZZ喫茶が入っている)雑居ビルのスナックの看板である。ほかにも「スナック ここ」というのがあったが、あまりのセンスの良さ(←皮肉ではない)に、思わず写メールしてしまった。