『正しい保健体育』

みうらじゅん。たとえば、次のような記述は「正しい」。

　もともと男子は、金玉に支配されるようにできています。
　金玉というのが本体で、その着ぐるみの中に全部入っているのが、人間の男なのです。
　いつのまにか進化した人間は、その「金玉着ぐるみ」からはみ出した部分が大きくなってしまいました。しかし、はみ出したとはいえ、その大本にあるのが金玉であることにはかわりありません。
　ですので、そのはみ出した部分を「義務教育」でうめて、金玉に支配されないようにしているのです。義務教育とは「支配からの卒業」なのです。（8）

　若いうちは、とにかくオナニーをすべきです。
　若いときからセックスしている人は、「女なんてこんなもんだ」と思ってしまいがちです。「生理中はくせえぞ」などと言うところにドリームは生まれません。子供も生まれません。
　だからセックスは、20歳までしてはいけません。……
　若いうちから女性器をリアルに描けたりしないほうがいいし、どこを責めたら感じるかなどということは、知らないほうがいいです。「噂に聞いたけど、潮吹くらしいぜ」「えー！」「嘘だろ？」くらいで悶々とするのが青春だと言えます。（15）

次のような記述も、まずまず「正しい」。

……性教育というのは実は「恥ずかしさ」を学ぶものですから、毛が生えたことを自慢するのはまちがいです。「毛が生える」というのはとても恥ずかしいことなのです。……
　あんなにつるっとしたところから、タマネギの球根の根のようなぶさいくなものが生えてくることは恥じるべきです。だから、生えかけを見つけたらできるだけ剃り落とすのが正しいやり方でしょう。
　先生もお母さんに「それは切らんでも……」と言われたことがありますが、それでも切りました。ハサミできれいにカットしました。なぜなら、少年の心を失いたくないからです。（69）

しかし、これはさすがに冗談のような気もする。

　先生は一度、女性の気持ちを知るために、自分の出したものを食したことがあるのですが、それは食えたものではなかったですね。でも一度は試したほうがいいと思うのです。そして「まずい！」と思ったあとで、それを女の人は食べてくださっていることに気づけば、おのずと女性に対する「優しさ」が生まれるのです。
　だから女性も、男が好む「酢の物」を、一度は自分で食してみてはどうでしょうか。……（78）

次の記述は、もしかして「正しい」かもしれない。

　「包茎は不潔だからよくない」ともっともらしいことを言う人がいますが、実はずるむけよりも包茎のほうが気持ちいいから、歯止めをかけようとしているのですね。包茎を馬鹿にしたような風潮にしているのは、本当は包茎万歳だからなのです。ずるむけはいやらしいと思われがちですが、ずるむけの人こそ実は淡白で、包茎の人のほうが確実にエロです。……（103）

あと、研究課題のひとつとして挙げられているのが、「２．オナニーのあとの虚無感について、各自レポートを作成して発表してみよう」なのだが、これの参考資料としては、http://d.hatena.ne.jp/seiwa/20050411を挙げておこう。
しかしこの本、もう少し論理的に書いたら、さらに面白くなったと思われるので、残念な気がする。キャラクターと内輪ネタで書いてしまっている部分があり、そこがやや物足りない。だが、それも著者の「中道」精神ゆえのことだと思えば、まあ仕方ないか。

正しい保健体育 (よりみちパン!セ)