プラグマティズム

プラグマティズムは超越的な真理の存在を否定する。なぜなら、われわれが表象しうるもののみが、われわれにとっての実在である以上、われわれの表象をこえた世界を、われわれは認識することができないからである。カントはそれをふまえたうえで、超越論的な世界の存在を前提にした。しかしプラグマティズムは、観念と実在の間に深淵を認めない。こうしたプラグマティズムは、ドイツ観念論を中心とする思弁的哲学にたいするアンチテーゼとして、一定のインパクトをもつ思想運動であったといえる。
とはいえ、プラグマティズムの問題構成には、重大な欠陥が内在している。プラグマティズムは、超越論的な真理を読みかえ、有用な結果をもたらす行動こそが真理なのだと主張する。しかし、有用性とは何だろう?たとえば、一見して「有用」ではなかった事態が、後から振り返ってみると結果として「有用」だった、というようなことは十分にありうる。また、思弁的哲学は超越的真理をめぐる探究であるとして批判されるが、それは同時に、純粋な知的欲求をもたらすという意味で「有用」な要素をもっている。
プラグマティズムの「真理」概念には、上記のような問題がある。したがって、思弁的哲学とも、プラグマティズムとも異なる、「真理」概念を考えなくてはならない。それは、なんら超越的な「真理」でなく、また特殊に意味づけされた「真理」であるのでもない。社会が生み出し、そのかぎりで肯定的な意味をもつような「真理」。このような「真理」認識を鍛える必要がある。