『未完成交響楽』

1933年、オーストリア。監督ウィリー・フォルスト。
双葉氏による紹介。

ナチスに支配される直前のオーストリアハンガリー映画界が生んだ世界古典映画史に輝く名作。フランツ・シューベルトは恋人に交響曲を捧げるが、悲恋に終るや、その第三、第四章を破り棄て、「わが恋の終わらざる如く、この曲もまた終わらざるべし」と書き残したというお話(もちろんつくり話)。ウィーンの名高い寺院が映るが、これが動き出し、実は人の背に背負われた一枚の絵だった、という仰天する開巻から、有名な麦畑の散歩場面の横移動まで、カメラは流麗、ウィーン・フィルの「未完成」、ウィーン少年合唱団の「野ばら」など圧倒的魅力。香気高い名画である。(265)

と、超高評価なのだが、たしかにウィーン・フィルは良かった。カメラの使い方も、当時はたぶん斬新だったんだろう。安定感のある、「これぞ映画!」というような映画だと感じた。シューベルトのそっくりさんも、なかなか。
ただ私にとっては、モチーフがヌルすぎる。ロマン派音楽の現実逃避、神経質、傷つきやすさ、天才崇拝、恋愛。出てくる人たちがあまりにお上品だ。お子様向けの話だと思う。きわめて品の良いお話ではあるが…。
付け加えると、「未完成交響曲」を書いたシューベルトは、相当深刻な人だったのではないかと私は思っているのだが、どうなのでしょう?

未完成交響楽 [DVD]

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