『モナ・リザの失踪』

1931年。フィルムセンター。
荒唐無稽なストーリーで、リアリズムとしてみると、吹き出してしまうような所がたくさんある。でも、話がグングン進んでいくので、最後には不思議とスッキリした気分になる。音楽も大げさだが、大げさなストーリーとうまく合っていて良い。たぶん、感情の描き方が、上手なんだろう。双葉さんの寸評が、うまく雰囲気を伝えている。

ルーブルの名画「モナ・リザ」に心を奪われた青年職人は、モナ・リザに似た女(実は向いの家の女中)に恋をして、彼女のために「モナ・リザ」を盗み出しさえする。しかし女はその名画の意味も知らず、自分の美しさを誇るばかりだった。青年は今はうとましくなった「モナ・リザ」を売り払うが、捕まり裁判にかけられる――。この題材、この女性の驕慢さに対する一矢の痛快さ。ボルヴァリー監督の才能には人々を一驚させるものがある。画面と音楽の完全なるハーモニーも全篇にゆきわたっている。(276)

なぜ「モナ・リザ」を盗めば女を口説けると思ったのか、フィレンツェの教会で突如モツレクが流れてきて改心(?)するのはなぜか、またなにかを改心(?)したように思われるのに「ナポレオンによって奪われたモナ・リザを取り戻しただけだ」とウソの犯行動機を語るのはなぜか、と意味不明なところ満載。でも、不思議と楽しい。