『カリガリ博士』

フィルムセンター。1920年、ロベルト・ヴィーネー監督。

ドイツの高い芸術性を一躍世界に知らしめた表現主義映画の代表作。催眠術を用いるカリガリ博士の犯罪が、印象的なライティングとセットデザインのなかで映し出される。1921年に日本で公開され、溝口健二をはじめ多くの芸術家に影響を与えた。(パンフより引用)

傑作。眠くて、筋を十分把握できなかったが…(後で判明)。
催眠術、殺人、奇術、小人、猿、夢遊病者など、あやしい仕掛けがてんこ盛り。まったくの無声映画で、奇妙な世界の、奇妙な登場人物が、ほぼ回想形式で物語られる。カリガリ博士夢遊病者のキャラクターは、インパクトが強すぎ。で、結局、語り手のインパクトが急上昇する仕掛け。
表現主義ということで、映像がほんとうに気味が悪い。最初の映像からして、寒々しい。冷たくて暗い塀ぞいの場所に、ぼうっと白い服の女が浮かび上がる。それが、みるみる近づいてくる薄気味悪さ!
見終わった結論としては、カリガリ博士の歪んだ世界をそのまま狂気とみるか、あるいは観客の追体験した世界こそがリアルであったと考えるかで、作品のメッセージ性の受け取り方が百八十度異なる、で、それだけでは不十分で、結局どちらもアリで、どちらもナシだという意味の宙吊り状態に耐えることが、表現主義の可能性だったにちがいない、ということになりました。おすすめ。
亜細亜の光』(1925年、フランツ・オステン監督、ヒマンス・ライ監督)も同時上映されていたが、こちらはほとんど寝ていた。昔のリアル・インドが映っていた。