『吹けば飛ぶよな男だが』

フィルムセンター。1968年。山田洋次監督。なべおさみ緑魔子有島一郎、佐藤蛾次、ミヤコ蝶々小沢昭一

大坂で芽生えた、しがないチンピラと家出少女の恋を綴る山田洋次の名作。ユーモアの向こう側に深い悲哀を漂わせた、森崎東と共同執筆のシナリオも素晴らしい。

見る予定はなかったのだが、これはほんとうに名作だった。小沢昭一さんの朗読も素晴らしい。
大阪のネオンが道頓堀川の水面にちらちら反射している映像からはじまる。その時点でぐっと引き込まれてしまう。理性的かつ倫理的にみれば、この映画には否定的な評価も可能だ。おバカなチンピラがおバカな女の子の人生を誤らせ死にいたらせてしまう、またチンピラはその経験からは何も学んだようには思われないのだから・・・。後先の読めない、読もうともしない人間たちが、愚かさのなかで苦しみ、喜び、希望と絶望を交錯させる。痴愚礼賛としての人間肯定。その確かなリアリティー。名作です。