立川談春独演会

東京芸術劇場立川談春を聞くのは初めて。『en-taxi』で読んだ文章は滅茶苦茶上手いし、家元もしょっちゅう誉めているので、『柿子memo。』にチケットを取ってもらったのをよい機会に、ようやく見に行くことができた。
顔から想像していた通り、声がとても良い。『お見立て』『遊女夕霧』の二席。今日は柳家小さんの命日だったらしく、小さんのお墓参りにいった話、稽古をつけてもらったときの話もあった。談志に、覗き部屋やパチンコに連れていかれたエピソードも興味深かった。
で、肝心の落語の方だが、何というか、大変良かった。良かったのだけれど、あまり落語を聞いているような気にはならないのが、不思議な感じもした。寄席芸人のオーラってのが、あんまり無いのかもしれない(それは談志師匠には感じられるものだ)。
今日の噺の性格もあるのかもしれないが、ただひたすら馬鹿馬鹿しい人、という人物造型があまり出てこないのが、以上のように感じた理由かもしれない。ただ噺自体は、惚れ惚れとしてしまう素晴らしいもので、明らかに上手いし、私のような素人にはわからない奥深い魅力も、まだまだ隠されているようにも思われた。
『お見立て』の方は正直どこらへんを鑑賞すべきか分からなかったが(もちろん十分楽しんだのだけれど)、『遊女夕霧』前半の講談部分はほんとうに素晴らしく、またその余韻のなかで進んでいくストーリーの機微の細やかさにも、圧倒される思いだった。(詳しくは、「密偵おまさ」さんとか「柿子メモ」とか「晩鮭亭」さんのブログを見てくださいな。)