『水からの伝言』(2001)

「ちくま」(2006.4)の斉藤貴男の連載より。2002年8月7日の「第七回京都市道徳教育研究大会」で「心に響く道徳の時間」という研究発表がおこなわれたのだという。

主題は「言葉の大切さ」。というのもA教諭は、四月新学期に受け持った学級で、生徒たちの言葉の乱れに驚かされていた。「あほ」「ぼけ」はおろか、「死ね」「きもい」などが、まるで挨拶のように飛び交っていたという。

関西だと「あほ」は挨拶である、なんてツッコミはひとまず置いとこう。この教諭の授業は、江本勝著『水からの伝言〜世界初!!水の氷結結晶写真集』(波動教育者、一九九九年)を使用し、〈言葉の持つエネルギー〉を実感させるものだったという。授業の展開例は、次のようなものだ。

○「ありがとう」と書いた紙をはった水で作った結晶はどのようにできるでしょう。
○「ばかやろう」と書いた紙をはった水で作った結晶はどのようになるでしょう。
○次の2枚の結晶は今までと違う方法で作りました。どのようにして作ったでしょう。ヒントは耳です。
・バッハの感謝の気持ちを込めて作った協奏曲
・世の中の悪口を歌ったヘビーメタル

ええと…。「ありがとう」の水はきれいな結晶になって、「ばかやろう」は汚い結晶になるんだそうです。これ、以前、クボヅカ君がはまっていたやつですね。
生徒の反応と教師のコメント。

☆ 今日の道徳の授業をして、すべてのことは、言葉からはじまるんだなと思った。人間も氷もいっしょじゃないかな。良い言葉をつかうとたくさんの友達ができて悪い言葉をつかうと、友達がへるんじゃないかな。水も人間もうまくできているなあと思った。
T 私のほうが感心した感想である。この授業を通して子どもなりに自分の生き方までも見出している。実際に行動できるかは別としても、こんなふうに言葉について考えられると、前向きに生きていけるのではないか。自分が人生の主人公になっている部分である。

アニミズム。でもこれって、プラグマティックに考えると、すごく良いよね。いわゆる「力のある教材」。「悪いことばっかりしてたら、人さらいがくるよ」とか言って、幼児をだまらせる手法ですわな。それに実際、占いとかにはまってる人はたくさんいるし、いまだに細木数子はテレビに出てるし、一般大衆レベルの教育はこれくらいで丁度良いんじゃないか、との考えも頭をよぎる。どうですか?みなさん。

水は答えを知っている―その結晶にこめられたメッセージ

水は答えを知っている―その結晶にこめられたメッセージ