深作欣二『誇り高き挑戦』(1962)

シネマヴェーラ渋谷。安いし、見やすい映画館ですね。

公開:1962年 監督:深作欣二
主演:鶴田浩二、梅宮辰夫/大空真弓中原ひとみ
進駐軍汚職を暴こうとしてリンチをうけた末、業界の下っ端新聞記者に成り下がった黒木(鶴田)。やけに景気のいい工場を経営する三原産業に目をつけるが…。そこでは、戦中は特務機関員、戦後はGHQの諜報部員だった高山(丹波)が暗躍し続けていた。サングラスの下に隠した怨みと古傷。男・鶴田と梅宮が大企業に挑戦状を叩きつける社会派ドラマ。

背景音楽がジャズだったり、鶴田浩二ソニー・ロリンズそっくりのサングラスをかけていたり、丹波が得意の英語を駆使したり(!)、60年代前半という時期を考えても、本作が日活アクション映画のコスモポリタンな影響下にあることは明らかだと思われる。
それだけにかえって、深作欣二コスモポリタンな映画は撮れないことが明白になっているように感じた。そもそも主人公の鶴田が、占領時代の記憶を引きずって、「10年前と何も変わっちゃいない」日本人のお気楽さに憤りを感じている。海外の黒い勢力と手を結んで何も恥じない丹波に抗い、正義感を通して、自立した一歩を踏み出したいと望んでいる、要するに、徹底的なナショナリストなのである。
その意味で、非常に奇妙な映画だったと思う。作中の丹波のように、戦後社会の虚妄は虚妄としてそれなりに生き抜くしかないではないか、というニヒリズムもありうるわけで(梅宮はけっきょくこちらになびいていく、鶴田は孤独な戦いを強いられるのだ)、むしろこちらの方がコスモポリタンな冷徹さ(宍戸錠!)と相性が良いわけだが、鶴田のこだわりはあくまでも古風なままなのである。
自分のルーツにこだわらざるをえない右翼的心情への傾斜は、さすが『仁義なき戦い』の監督というべきか。(カメラが揺れる場面とか、新聞を使ったりとか、彷彿とさせるところもあった。)