今村昌平『豚と軍艦』(1961)

言うまでもなくこちらが目当て。

公開:1961年 監督:今村昌平
主演:長門裕之、吉村実子、三島雅夫小沢昭一、山内明、加藤武殿山泰司西村晃
アメリカ軍の残飯を頂戴して豚の餌にしようと思いついたヤクザ。自分を売り出したいチンピラ・欣太。川崎で堅気の二人暮らしを夢見る欣太の恋人・はるっペ。横須賀を舞台に不器用に、もがいて生きる人々の姿を痛烈に描く。滑稽で悲しいラストシーンは圧巻。『にっぽん昆虫記』の今村昌平が描く傑作・悲喜劇。丹波(ヤクザの鉄二)のどこか人をくったような演技も光る。

貧乏のなかを互いに足を引っ張り合いながら、しかもアメリカに寄生して生きていくしかない哀しい現実、というモチーフは充分に伝わってきたが、横須賀弁が早口すぎるし、やくざと米軍の間にどのような利権が発生しているのか、正直言って分りにくかった。長門裕之と吉村実子(?)の熱演は素晴らしく、機関銃がぶっぱなされて、無数の豚が逃げ出す混沌のシーンも、圧巻の迫力を備えていたけれど…。南田洋子も良かったが、肝心の丹波哲郎の役どころが掴みきれずに終わり、消化不良の感触が残った。