マキノ雅弘『弥次喜多道中記』(1938)

公開:1938年 監督:マキノ雅弘
主演:片岡千恵蔵杉狂児、楠木繁夫、ディック・ミネ美ち奴服部富子悦ちゃん
お江戸の夜の名物男・鼠小僧は殺人容疑にかけられ、雲隠れ。遠山金四郎は跡継ぎ問題に渋い顔。江戸から遠く離れた二人は道中で弥次喜多に間違えられてしまい…。愉快な女座長に旅役者、本物の弥次喜多も入乱れ、歌声に彩られた珍道中は続く。翌年の『鴛鴦歌合戦』の原型となる傑作オペレッタ時代劇。ディック・ミネ美ち奴服部富子など歌手たちの美声も必聴!

片岡千恵蔵が立派。杉狂児のことは、稲垣浩『日本映画の若き日々』に文章があった。
捕り物の場面、屋根にあがって逃げまくるスペクタクルが素晴らしい。美しい青空が見えて、気持ちが晴れる。最後に橋の上で捕まるときも、綺麗な月が、ほんとに綺麗だった。
なぜ鼠小僧の身元がばれたのか、そもそも鼠小僧はどのようにして偽装した暮らしを成り立たせていたのか、皆目見当がつかないが、まあそれはそれとして、マキノ映画には良質のマンガにしばしば見られるハイパーリアルな意味の充溢があり、それこそが各シーンの密度の濃さにつながっている。