マキノ雅弘『続清水港』(1940)

本当は2作だけ観て帰る予定が、第六部のあまりの救われなさに、帰るに帰れなかった。というわけで観た本作が、大傑作。

公開:1940年 監督:マキノ雅弘
主演:片岡千恵蔵広沢虎造沢村国太郎、沢村晃夫、瀬川路三郎、香川良介、志村喬
「石松を殺すな!」演出家の石田は舞台「森の石松」の演出と専務の無理な注文に悪戦苦闘。不貞寝をするうちに、なんと自分が石松に。こいつは夢か幻か。刻一刻と金比羅参りの時間が迫る!石松と虎造の粋で笑える浪曲の掛け合いなど、次郎長もののセルフパロディで大胆に魅せる。次郎長シリーズでお馴染みの茶摘み女と富士山で無事に幕は下りるのか?!次郎長 第八部と見比べるのも、また一興。

「その演出力の確実で豊富な源泉がすべてここにあるような気がするほど、なにもかもすばらしい」(126)というのが、山田宏一氏の評。なにもかもがすばらしすぎて、なにから褒めればよいのか見当もつかない。ただ「必見」とだけ言っておきたい。
――というのも何なので、すこしだけ書くと、片岡千恵蔵が良い、JAZZも浪曲も良い。廣澤虎造の浪曲は、「それが物語りの展開を速めたり要約したりするだけではなく、現実と夢をつなぐメロディーになり、さらに夢を通過してタイムスリップし、現在と過去をつなぐメロディーにもなる…」(126)。また志村喬大阪弁も素晴らしく、轟夕起子が気品のある美しさで、漫才仕立てのおかしみが絶品である。以上。