井上梅次『十七歳の抵抗』(1957)

無理が通れば道理は引っ込む。むりやりフィルムセンターへ。

(101分・35mm・白黒)旅芝居の座主の娘である女子高校生が、複雑な家族環境や恋の芽ばえに悩みながら成長する様を描いた青春映画。若き浅丘ルリ子が明るい初夏の光の中でみずみずしい存在感を放つ。また、主人公が思いを寄せる男子学生には津川雅彦が扮した。
’57(日活)(撮)永塚一栄(監)井上梅次(原)戸田昭子(脚)池田一朗(美)中村公彦(音)大森盛太郎(出)浅丘ルリ子津川雅彦長門裕之轟夕起子、広岡三栄子、小林重四郎、白木マリ、都築みどり、天路圭子、冬木京三

青春映画の傑作。浅丘ルリ子の可愛らしさが奇跡的なほど。優れた脚本でストーリー運びの妙にも唸らされた。
勉強も出来る、可愛らしくもある、だが親が旅芸人という出自で、そのことの引け目に苦しめられている可奈子(ルリ子)。失踪した母親(轟夕起子)が堅気として暮らしているに違いないという希望だけを胸に、純情ゆえの潔癖さに自ら苦しんでいる。出自の引け目があるからこそ恋も思うままにならない。「誰にも負けない!」と頑張るしかないのだ。
小娘のこだわりと言ってしまえばそれまでだが、医者の息子である津川雅彦が住む世界と旅芸人一座の世界との落差がみっちり描写され、可奈子が母の愛情を受けずに育った背景事情も加えられているので、十分に共感できる物語構成となっている。浅丘ルリ子の「可憐と生硬/もろさと意気地」の交錯する演技が素晴らしい。
浅丘ルリ子と父親と長門裕之が笑いながら泣く場面と、最後の浅丘ルリ子がお別れをする晴れやかな場面が忘れられない印象を残す。長門裕之も相変わらずの素晴らしさだ。