今井正『青い山脈』(前編)/『青い山脈』(後編)(1949)

新文芸座で二本立て。

1949年、東宝。監督・脚本:今井正、原作:石坂洋二郎、脚本:井出俊郎、撮影:中井朝一、音楽:服部良一
出演:原節子、若山セツ子、杉葉子池部良木暮実千代、伊豆肇、龍崎一郎

1949年段階でしか撮りえなかった戦後民主主義の理想主義的気運が感じられた。描かれている内容そのものが歴史的素材として非常に興味深いものだった。
なお映画的には、双葉十三郎『日本映画批判』(トーパスプレス)に詳細な作品研究がある。「カメラは絶えず人物を対象にしてあり、その対象となった人物の会話や行動から直接的に興味をひきだしている」点、「人物のかみ合いの面白さ」、「くすぐり」ではない「巧まざる笑い」が見られる点、が評価の対象とされている。「最初のほうの雪子と生徒が対立する教室の場面、雪子と沼田の交渉がはじまる場面、沼田と梅太郎のおかしな関係を示す場面」などが「からみ合いの面白さ」として挙げられている。
木暮美千代の梅太郎が、理事会で「終わり」と言って発言を終えるのが面白かった。中学生か高校生の時分の若山セツ子が愛くるしい。あとやはりこれは原節子の代表作の候補に挙げられるのではないだろうか。清清しい好演だった。