黒沢清『LOFT』(2006)

新文芸座。3本目。まずまずの作品。

公開日: 2006/09/16 上映時間: 115分 監督: 黒沢清 脚本: 黒沢清
出演: 中谷美紀 豊川悦司 西島秀俊 安達祐実 鈴木砂羽 加藤晴彦 大杉漣
サスペンスホラーの世界的名手・黒沢清監督が、『ドッペルゲンガー』以来3年ぶりに手がけた長編劇映画。1体のミイラを軸に起こる非現実的な恐怖と混乱、その中で交差する愛憎の数々を、効果的な音楽と幻想的な映像演出を交えて描く。『嫌われ松子の一生』の中谷美紀と『日本沈没』の豊川悦司が、突如燃え上がる男女の愛をまるで舞台演劇のようなアクションで演じれば、西島秀俊安達祐実も陰を背負う人物を印象深く怪演する。

関西ドットコムの監督インタビューより。

Q__監督の作品は鑑賞者に想像をうながすものが多く、この『ロフト』もまさにそんな映画ですよね。
A――「どれだけクリアにすれば良いのか」「“わからせるもの”のほうが、おもしろいのだろうか」といつも考えます。今回は、中谷美紀さんと豊川悦司さんの奇妙なラブ・ストーリーが二転三転して、ある結末を迎えます。ぎくしゃくしながらもその展開が貫かれていれば、あとは蛇足になるようなことはあえて説明しないほうが、観やすいのではないかなと。かなり色んな要素を詰めこんだので、「やりすぎたかなあ」なんて思ったりもしましたが、「デヴィッド・リンチ監督はもっとやっているよな」と考えたり、あと鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』の多彩な世界を浮かべたりして。だから「こういう(詰めこみ過ぎた)作品も良いんじゃないかな」って(笑)。あとはお客さんの反応を見て、「失敗した!」とか「ああ、うまくいったなあ」と一喜一憂しようと思います。

緊張がつねに持続するストーリーになっている。壁などの障害物を利用した死角を作り出すことによって、死角の多寡のコントロールを通じた「あっちの世界」と「こっちの世界」の行き来が映像的に表現されている。観客自身が幽霊の視線を共有させられる技法などはなんだか古典的すぎて馬鹿にしているようにも思われ、また幽霊がこっちに出たり、あっちに出たりしているのを見続けていると「かくれんぼはもういいよ」と飽きが来てしまう。
ホラー映画なのだからもうすこし怖くても良いと思ったし、「最後のはあれはオチか?」と、監督自身が自覚してやっているのだろうけど、完全に置いてきぼりにされてしまった。でも最後の朝日が差し込む沼のシーンは、全体として澄んだ色彩美が感じられた。