小林信彦『植木等と藤山寛美』(新潮社)

『日本の喜劇人』(新潮文庫)の番外編。この本も名著。森繁久弥渥美清についての記述が効いている。
ところで、いつか福田和也が「自分は小林信彦立川談志のどちらを選ぶかで選択を迫られた。小林信彦はナンセンスの肯定で、立川談志は業の肯定だ。」というような意味のことを言っていたけれど、立川談志がナンセンスを肯定しないはずがないし、小林信彦も業を自覚していないはずがない。この本で描かれている藤山寛美は深い業を背負った人間そのものだ。ナンセンスと業は互いに排他的であるどころか、深く通底しあうものであるように思われる。

植木等と藤山寛美―喜劇人とその時代

植木等と藤山寛美―喜劇人とその時代