ジョン・フォード『若き日のリンカーン』(1939)

公開:1939年 監督:ジョン・フォード
主演:ヘンリー・フォンダ、アリス・ブラディ、マージョリー・ウィーヴァー、ドナルド・ミーク、リチャード・クロムウェル、エディ・クィラン、ミルバーン・ストーン、ウォード・ボンド、フランシス・フォード
敏腕弁護士として活躍していた若き日のリンカーンの姿を描いた法廷ミステリー。独立記念日に起こった警官殺害事件で、犯人として逮捕されたクレイ兄弟の弁護を引き受けるリンカーン。しかし群集は怒り狂って兄弟をリンチにかけようとし、裁判はのっぴきならぬ状況に追い込まれる。後の天才政治家の底知れぬ妖気が次第に浮かびあがってくる、巨匠フォードの一本。

『周遊する蒸気船』には遠く及ばず。しかし誤って殺人を侵してしまい、保安官に捉えられ、裁判にかけられるというストーリーは、『蒸気船』と同じ。純朴で文字もロクに読めないアメリカ人にとって、自らの生活の倫理観を言葉にしてくれる弁護士リンカーンはさぞかし心強い存在であっただろう。紛争が身近に存在したアメリカの開拓民にとって、生活倫理と連続する紛争解決の言葉=「法」がどのような重みを持っていたのか、ちょっと考えさせられた。陪審員制度の社会史的根拠も興味深い。