神代辰巳『恋人たちは濡れた』(1973)

公開:1973年 監督:神代辰巳 主演:中川梨絵絵沢萠子、薊千露、大江徹、堀弘一、清水国雄、高橋明
5年振りに故郷の土を踏み、映画館のフィルム運びを仕事にする克は、ひょんなことからかつての同級生・光夫とそのガールフレンド洋子に出会う。名を捨て過去を捨てヘラヘラ自嘲しながら日々を送る克に興味を示し共に寂れた町を漂流する三人だが…。唄い、地べたを這い、ぐるぐると回り、浜辺で砂にまみれながら延々と全裸馬飛びをする若者たちの、刹那的瞬間を見事に切りとった傑作青春もの。

『赤線玉の井 ぬけられます』は傑作だったが、この作品はイマイチな出来だった。黒木監督『竜馬暗殺』の中川梨絵をカラーで拝めるのが最大の見所であるが、全体的に間延びしたテンポの悪さが目に付いた。思うに、『ぬけられます』はプレモダンの女達を描いて成功したものの、ポストモダンな前衛路線に挑戦した本作品は、監督の本来の資質にそぐわないものだったのではないか?
それでも、「唄い、地べたを這い、ぐるぐると回り、浜辺で砂にまみれながら延々と全裸馬飛びをする若者たち」のシーン、自転車に二人乗りしてぐるぐる回るラストシーンは、なかなか印象的なシーンだったといえる。中川梨絵は運動神経も良いし、歌もうまいし、頭もよさそう。もっと見てみたいと思った。