小沼勝『さすらいの恋人 ―眩暈―』(1978)

公開:1978年 監督:小沼勝
主演:北見俊之、小川恵、高橋明飛鳥裕子、吉川遊土、織田俊彦、浜口竜哉、草薙良一、中川明、大矢甫、八代康二、雪丘恵介、小泉郁之助
人気のない公園の噴水に打たれながら一人佇む女・京子。彼女の様子にただならぬものを感じた男・徹。互いの体を温めあい共に暮らすようになる二人は、苦境に追いつめられあえぎながらも、必死に愛し合ってゆく。「あんたって、あたしがいなきゃダメなのよ」。中島みゆきの「わかれうた」に乗せて、理不尽な暴力の渦のなか貫かれるシンプルな愛が見るものを射る。

この映画はエロという点では、なかなか職人技的なのだが、藤田作品よりもレベルは落ちる。 白黒ショー(?)とやらで公衆セックスをするという設定は面白いし、小川恵という主演女優の何ともいえない魅力も素晴らしかった(完璧な美人ではないのだが、憂いがあって可愛らしい)。
しかし、主人公のやけっぱちな生活ぶりは甘えているとしか思えないし、「そのやけっぱちぶりに感情移入してくれよ」とでも言いたげな作品の雰囲気には、断固拒絶したい気分になる。とくに、暴力シーンでそう思った。ラストの渋谷の風景は興味深い。