川島雄三『昨日と明日の間』(1954)

(120分・35mm・白黒)公私にわたるパートナー(淡島)がありながら、別の不倫に悩む美人妻(月丘)にも心惹かれる男(鶴田)を描いたメロドラマ。二人の異なる女性の魅力を井上靖は抽象的に描いたため、映画に具体化するのは困難だったが、面白く描くことに重きを置いた、と川島は語った。
’54(松竹大船)(原)井上靖(脚)椎名利夫(撮)西川亨(美)逆井清一郎(音)黛敏郎(出)鶴田浩二進藤英太郎月丘夢路淡島千景、菅佐原英一、御園裕子、大木実片山明彦、大坂志郎、永井達郎(秀明)、高木信夫、野添ひとみ、渡規子

めちゃくちゃ面白かった。鶴田浩二が真面目なのか山っ気があるのか、デキル男なのか抜けているのか分からず、淡島には押される一方で、月丘には毅然としている。脚本的には意味不明のカルト映画。でも最高に面白い。
映画内映画とか、透明な地面とか、豪華客船ロマンスバージョンとか、とにかく監督のやりたいことがすべて試みられているような、目まぐるしい技法の変転。不統一というべきか、情緒不安定というべきか。でも「次に何か面白いことをやってやろう」と常に考えられているので、期待が見事に裏切られる爽快さが気持ちいい。進藤英太郎の意味不明の高笑いも最高だった。一応、物語が時間軸上に対称となる構成となっている。<失恋する女のいじらしさ>というモチーフは前回にも見られた要素だった。