川島雄三『イチかバチか』(1963)

(102分・35mm・白黒)一代で製鋼会社を作り上げ、巨大工場の建設という大博打に出た老社長(伴)と、強引にその誘致を進める市長(ハナ)の駆け引きを描く。大胆な俯瞰ショットが多く、新しい川島映画を予感させるものだったが、公開の5日前にアパートの自室にて急逝しこれが遺作となった。
’63(東宝)(原)城山三郎(脚)菊島隆三(撮)逢沢譲(美)育野重一(音)池野成(出)郄島忠夫、ハナ肇伴淳三郎山茶花究谷啓横山道代、福田公子、団令子、水野久美二瓶正典、小川安三、松本染升、堤康久、宇野晃司、安達国晴、石田茂樹、若宮忠三郎

1960年代前半の地方都市(愛知近辺か)の風景を伝えるフィルムとして、きわめて貴重なものだと思われる。伴淳三郎が主演なのもハマリ役だし良かった。
えらく重厚に始まったが、結局いつもの川島流ドタバタ喜劇。喜劇精神については最後まで一貫していたんだなと思った。ラストの市役所の屋上での市民集会は最大の見所だが(馬鹿馬鹿しいほどの大人数が屋上に集結するという川島流ナンセンス)、女性問題で開き直るハナ肇の演説シーンが非常に楽しかった。団玲子がまだ痩せていた。