清水宏『簪』(1940)

公開:1940年 監督:清水宏
主演:田中絹代、川崎弘子、斎藤達雄笠智衆日守新一、三村秀子、河原侃二、横山準、坂本武
帰還兵・納村が温泉で療養中に足に簪をさして傷を負ってしまう。簪の持ち主である恵美が東京から謝罪にやってきて、お互いの身の上も知らぬまま、納村は恵美に淡い恋心を抱くようになるが…。細かい人物描写で温泉場に集まった人々の人情の機微を描く。

シネマヴェーラ。このときには田中絹代清水宏は別れていたのかな?
ともあれ、田中絹代笠智衆の映画。温泉宿のひと夏を舞台に、理屈っぽい学者先生、囲碁狂の老人、その孫たち、若夫婦などが、田中と笠の恋愛を見守りつつ、楽しくのんびり過ごしている。笠が足のリハビリで川の橋を渡るあとに、按摩が渡っていくなど、面白い仕掛けがたくさん施されている。田中絹代が笠の応援をしていくうちに自然に好意を抱いていく様子が、観客にもすっと納得できるのが良い。ラストはもっとはっきりしたオチをつけてほしかった。