藤原杉雄『りんご園物語』(1950)

(46分・35mm・白黒)戦後主として日活作品に出演した下條正巳は、本作では準主役のりんご園で働く青年を演じている。みずみずしく捉えられたりんご園を背景に、さわやかな笑顔を見せる若き下條の姿が見られる。
’50(東宝教育映画)(出)下條正巳(りんご園の青年)(監)藤原杉雄(脚)西尾善介(撮)前田実(美)高山良策(音)斎藤一郎(出)島田敬一、沼崎勲、大町文夫、槇村浩吉、輶野唯勝、荑良明、塚原八郎、有山みどり、東紀江、山岸道江

『蝿のいる街』とかそんな題の岩波教育映画を観たことがあるが、「東宝教育映画」はドキュメンタリー性が希薄なぶん戦後民主主義の啓蒙性がモロに表れていてこの上なく興味深かった。1950年というタイミングでしか撮りえなかったシーンがずいぶんある。映像資料として個人所有したいほど。
リンゴに被害をもたらす「赤星菌」。顕微鏡で「赤星菌」を見つけ、消毒法、処置法を科学的に研究する若き日のおいちゃん(下條正巳)。「赤星菌」は長雨の後、スギ科の樹木から発生するのだが、菌が発生しても村人は「神木だ」「先祖からのお守りだ」と封建的な考えから抜けられない。地元の有力者との人間関係も、進歩的な考えの実現を妨げる。しかし若い人たちの熱意、子供たちの協力もあって(本数調査)、めでたく杉は伐採、りんごは収穫を迎えましたとさ。
スギが切られるシーンは若干文化大革命的な匂いがした。