山田洋次『男はつらいよ 寅次郎物語』(1987)

(101分・35mm・カラー)寅さんが少年の母親探しに付き添って旅立つ「男はつらいよ」シリーズの第39作。おいちゃん役は『男はつらいよ 寅次郎子守唄』(1974年)以降、松村達雄から下條正巳に引き継がれたが、本作では松村も特別出演している。軽演劇のコメディアン時代に渥美清と組んでいた関敬六は寅さんのテキ屋仲間・ポンシュウとしてレギュラー出演した。
’87(松竹)(出)下條正巳(おいちゃん・車竜造)、関敬六(ポンシュウ)、松村達雄(菊田)(監)(脚)山田洋次(脚)朝間義隆(撮)高羽哲夫(美)出川三男(音)山本直純(出)渥美清倍賞千恵子秋吉久美子五月みどり三崎千恵子前田吟太宰久雄佐藤蛾次郎吉岡秀隆イッセー尾形笹野高史、じん弘、すまけい、河内桃子笠智衆

男はつらいよ』をスクリーンで観てみようという企画。和歌山(和歌の浦)、奈良の吉野、伊勢が本作の舞台。ちょうど子供のときに行った当時の吉野が写っており、タイムスリップという気分だった。少年が出てくるのだが、これが親戚の子供にクリソツで、私と同世代のロストジェネレーションだと思うがこの人はちゃんと就職できたのだろうか?寅次郎のようにニートになっていないだろうか。
イッセー尾形の関西弁もひどかったが、秋吉久美子の関西弁は、もうそれだったら標準語で統一してください、と言いたくなるほどひどかった。その方言はつらいよ。でも秋吉の演技は良かった。
寅さんはもう歳でいちいち失恋もしていられないという感じのストーリー。そのぶん、寅さんの永遠の少年性(ニート性)が純化されていて、すごく良かったのだった。天王寺の旅館のファンタジー、秋吉と夫婦生活のファンタジー、それを寅さんが一人芝居するシーンが、すごく染みた。
男はつらいよ』のクオリティーはやっぱりすごい。思春期の吉岡秀隆少年が「おじちゃん、人間はなんのために生きるの」と訊くのに答えた寅さんのセリフも良かったね。