清水宏『人情馬鹿』(1956)

(71分・35mm・白黒)デビュー当初から溌剌とした美人女優として華々しく登場し様々な大スターと共演した角梨枝子。大正時代を舞台とする川口松太郎の人情劇を現代風にアレンジした本作では、愛する男のために自己犠牲も厭わない健気なキャバレーの歌手を演じている。
’56(大映東京)(出)角梨枝子(村田ユリ)、根上淳(日下検事)(監)(脚)清水宏(原)川口松太郎(撮)高橋通夫(美)仲美喜雄(音)米山正夫(出)菅原謙二、藤田佳子、船越英二、潮万太郎、三田隆、進藤英太郎、浪花千榮子、滝花久子、小原利之、小山内淳、ジョー・オハラ、ペギー葉山

「愛する男のために自己犠牲も厭わない健気なキャバレーの歌手」とか書いてあるが、デタラメもいいところ。愛してもいない男なのに、まじめなお母さんの様子にうたれて、まともなことがしたくなった女の気まぐれがテーマ。71分と短いのは素晴らしいが、出来は平凡で、むしろストーカー気味の男の位置づけが奇妙だと思った。よく分からない映画だったが、キャバレーの女主人公が突然大阪弁をしゃべったり、交渉の際にいろんな技を繰り出すところが面白いといえば面白かった。