今井正『ひめゆりの塔』(1953)

(126分・35mm・白黒)戦争の最前線で無惨な死を余儀なくされた沖縄のひめゆり部隊が描かれる。前年の『生きる』で若さ溢れるヒロインを好演した小田切みきは、本作でも悲惨な状況のもとでも必死で生き抜こうとする女生徒の一人を演じている。前進座出身で、近年まで老婦人役で親しまれた原緋紗子も端役として出演している。
’53(東映)(出)小田切みき(生徒・尾台ツル)、徳永街子(生徒・安座間京子)、利根はる恵(安里ルリ)、原緋紗子(生徒の母)(監)今井正(脚)水木洋子(撮)中尾駿一郎(美)久保一雄(音)古関裕而(出)津島惠子、岡田英次、信欣三、石島房太郎、殿山泰司河野秋武、春日俊二、神田隆、南川直、清水元香川京子、関千惠子

沖縄戦線、ひめゆり部隊の悲劇を今井正監督が粘り強く正攻法で描いた。終戦から八年後のことである。ハッタリを排し、リアリズムで細かい描写をつみ重ね、あの戦争の悲惨な現実を伝えた。今井さんの代表作の一つと云ってよい。あのころ、これみよがしの反戦映画がいろいろ出たが、そうしたものとは一線を画す。砲火のあいま、少女が髪を洗おうとかがむ。次の瞬間、少女の顔は水面に沈んでいた。というシーンが印象的で…」(双葉十三郎『日本映画ぼくの300本』)。
期待していたほどではなかった。今井正の作品は洗練された感じがなくて、そこが良くも悪くも特徴なのではないか。それにしても沖縄にはジャングルがあるのに、どうしてあそこまで執拗に爆撃にさらされたのだろう?空爆というのはそんなに逃げ切れないものなのか?よく分からない*1。米軍の戦車からの呼びかけ(「出てキナサイ、ワタシタチを信ジナサイ、無益な殺生はヤメマショウ」)にはリアリティーを感じた。いくら国際法を知っていたとしても、あの状況ではやはり出ていく勇気は持てないのでは?香川京子がオーソレミオを唄っていた。

*1:と、書いてみたものの、従軍で看護婦やってたんだから戦場真っ只中なのは当たり前か。