ジュゼッペ・トルナトーレ『マレーナ』(2000)

原題:Malena/2000年/イタリア・アメリカ 監督: ジュゼッペ・トルナトーレ 音楽: エンニオ・モリコーネ Cast マレーナ・スコルディーア … モニカ・ベルッチ、レナート・アモローソ…ジュゼッペ・スルファーロ、レナートの父 … ルチアーノ・フェデリコ レナートの母 … マティルデ・ピアナ、学校の先生(マレーナの父) … ピエトロ・ノタリアーニ、ニノ・スコルディーア(マレーナの夫) … ガエタノ・アロニカ 配給: ギャガ
第二次大戦下、シチリア島の少年レナートは美しい年上の女性マレーナに恋をした。が、夫の戦死を機に、美しいがゆえに時代の波に翻弄されるマレーナ。無力な少年は、ただ影のように追うだけで…マレーナの愛、孤独、絶望を見続けた少年が感受性豊かな大人に成長する姿を描いた感動作!!

以下の理由により、傑作である。イタリア映画としての良さもあった*1
シチリアの男が全員魅了されていたように、モニカ・ベルッチマレーナは誰もが「一発やってみたい」と感じさせる、とんでもない美人である。いや、かりに一発やってみたとしたら、到底一発どころでは収まらない究極の美人である。だがマレーナはその無表情が象徴するように、少年の記憶の中で極限まで美化された存在である。現実的存在と言えるのかは、少々あやしい。ロマンを紡ぐ男のサガをどこまで容認できるかによって、本作への評価は変わってくるのではないか?(特に女性がどう評価するだろうか?)
しかし私は男なので「マレーナ万歳!」の立場である。とくに、妄想の中で何度も「あなたを永遠に守ります」と言っているのに、実際には何の助力も出来なかった少年の「痛みの自覚」の描写が素晴らしい。街を追われ、汽車に乗るマレーナを見つめる少年のシーンは、やはり女性でも感動するのではないか?痛みの感覚の中でマレーナが切なくも神々しく映った。
男は勝手にロマンを作り上げ、それを追い求め、挫折し、ようやく現実を発見する。それでやっとこさ少年から大人へと成長するのである。いや、成長できたかどうかなんて、挫折した後でも怪しいものだ。文句あるか!――という映画だと思った*2

*1:おしゃべりがけたたましい部分がそうだが、イタリア・ファシズムの描写も興味深かった。黒シャツがかっこいい。ムッソリーニの「非合理的飛躍」の時代的思潮も、青春映画としての本作を一層味わい深いものにしている。空襲場面が美しい。

*2:昔、談志師匠が「女は中学生でも怖い」と言っていたが、女の現実主義は脆弱な男にとって脅威であり、だから男の成熟は女を経由してなされるのである。あるいは成熟の拒否は、女の拒否なのである(オタク)。