バカだと居直るアメリカ人

正真正銘の名著。アメリカを語るならこの一冊は外せない。というか、この一冊を読まずにアメリカを語ることは、ほとんど無謀なのではないか。
ともかく、ホフスタッターの溢れんばかりの知性に圧倒される。「反知性主義」という視点から、こうもアメリカ史が描けてしまうのか、という驚きがある。反ヨーロッパ文明、福音主義の反理性主義から出発したアメリカは、19世紀末以降の専門職の興隆の結果、知識人の存在を無視できなくなる。が、そのことは、知識人における特有のアイデンティティー不安を招いた、とホフスタッターは指摘する。
本書の背景には、マッカーシズムの衝撃がある。「ヨーロッパの伝統から切断されたアメリカではロック思想が『理論信仰』された」というハーツの主張もあるように、マッカーシズムアメリカ社会に自己反省を促す契機となった。アメリカニズムの野蛮性、反知性主義の伝統という論点は、今日のアメリカを理解するうえでも欠かせないポイントだろう。
「テレビ伝道師ってそうなのか」「ネオコンって、だからこうなのか」「エンロンのトレーダーはこういう精神類型なのか」など、いろいろ応用的に分かったが、面倒なのでここでは述べない。もし知りたかったら直接聞いて下さい(聞ける人は)。とにかく、アメリカ社会について日本で流通している大半の本は、インテリベースの偏ったアメリカ観にすぎないので、その意味でも本書は必読。一般読書人にも読みやすい内容です*1

アメリカの反知性主義

アメリカの反知性主義

*1:たぶん。時間はかかるけど(私は一週間かかった)。