ピーター・ボグダノヴィッチ『ラスト・ショー』 (1971)

THE LAST PICTURE SHOW 118分 監督: ピーター・ボグダノヴィッチ 製作: スティーヴン・J・フリードマン バート・シュナイダー 原作: ラリー・マクマートリー 脚本: ラリー・マクマートリー ピーター・ボグダノヴィッチ 撮影: ロバート・サーティース 出演: ティモシー・ボトムズ ジェフ・ブリッジス ベン・ジョンソン エレン・バースティン アイリーン・ブレナン ランディ・クエイド クロリス・リーチマン シビル・シェパード サム・ボトムズ ジェシー・リー・フルトン

…一九五一〜五二年。テキサスの小さな町。一軒のおんぼろ映画館が高校生たちのデート場所。一人は人妻と関係し、一人は恋人とセックスでヘマをする、といった青春がしっとり描かれる。みなに敬愛されていた映画館主が死に、それとともに古きよきテキサスも消え去ったようにみえる。ある日高校生二人が映画館へ行くと、今日で閉館だという。上映作は皮肉にもテキサス魂を謳った『赤い河』(48)。往来には砂まじりの風。黒白映画が盛りあげる情感と非常。青春の孤独な余韻がながく尾をひく。ベスト・ショー。(双葉十三郎『外国映画ぼくの500本』)。

人妻の孤独にしろ裸のプール・パーティーにしろ、人々の孤独感は余りにも深く、心の隙間からはすぐに狂気が侵入してくる。砂嵐の中、掃き掃除をしている知恵遅れの少年は、トラックに轢き殺されてしまう。アメリカ社会がヒューマニズムを失ったことへの、鋭く痛切な告発がある。傑作。